父の最期

実家の建替えを機に、茶室を造った。
私と弟は、学生時代から江戸千家にお世話になっている。
父は、子ども達が学んでいて自分も仲間に入りたかったのか、七十の手習いで、第二教場に通うことになった。

父の傘寿の祝いにと両親を月釜に招待して頂いた。
あれから父は、コロナを機にお稽古を休むようになり、少しずつスローダウンしていった。そんな中、終の棲家で父とお茶ができたらと、新居には、水屋洞庫付の四畳半にした。
昨年末、念願の茶室開き。簡素な自宅の茶に、お家元ご夫妻のお出ましが叶った。

それから間もなく、寝たきりの日が続き、3月初め、眠るように84歳で人生の幕を閉じた。最期は水を欲しがった。亡き骸は病院から自宅に帰り、「末期の水」という儀式と「極楽」蝶の切り絵を家族で作って柩に納め、お別れをした。

振り返ると、父は最後まで何か学ぼうとしていた。
茶の湯を学ぶこと。父が残してくれた茶室。
それを胸に刻んでこれからも稽古に励んでいきたい。

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